少女趣味こーなあ 長屋版

今月の少女趣味こうなあ十五

                    河野 進

 光

太陽の光は

うすい障子紙さえ

むりに通らない

厚い鉄の扉も

すきまからさっと入る

愛とは

かくもひかえめで

逞しくすばやいのであろうか

 

自然と文化

木は一本で静かに

並んで林になって さらに静かに

重なり森になって いよいよ静かに

車は一輪で音をたて

並んで車輪になって さらに騒音たかく

重なり轟音になって 耳をつんざく

自然と文化のちがい

むかしの人ははっきり分けていた

唯一人

金殿玉楼の権力者も

軒の傾いた廃屋の貧しい人も

やさしい母は唯一人である

神さまは世の創めからお決めになった

もっとも大切なものは

たれにも与えられて

いつも一つである

太陽のように

 

熊さん 今回は河野進さんの詩を三つ掲載しました。河野進さんは、キリスト教の牧師さんです。一九〇四年生まれ、一九九〇年没。満州教育専門学校をを経て、神戸中央神学校で学び玉島教会において牧師となり、その時賀川豊彦より、岡山ハンセン病療養所での慰問伝道をすすめられ、以来五十有余年の間たずさわられました。

詩自体は分かりやすいので説明はいらないと思います。

ご隠居 なんかなるほどと思う、ええ詩やなあ。

虎さん わしもこの人の詩、好きやねん。来月は、一人の信徒を失うことはやさしいって言う詩あったやん。あれ載せてや。